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東京地方裁判所 平成元年(特わ)1558号 判決

本店所在地

東京都江東区三好三丁目一番一〇号

太洋畜産

株式会社

東京都中央区月島四丁目三番一九号

右代表者代表取締役

小保方勲

本籍

東京都品川区中延二丁目三〇四番地

住居

千葉県市川市大野町二丁目九五七番地の二

会社役員

中西三雄

昭和九年一月一八日生

本籍

東京都中野区上高田三丁目一五番地

住居

千葉県市川市下貝塚二丁目一八番一号

会社役員

市川保

昭和一五年七月五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺咲子出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人太洋畜産株式会社を罰金五六〇〇万円に、被告人中西三雄を懲役一年六月に、被告人市川保を懲役一年二月に各処する。

被告人中西三雄及び被告人市川保に対し、いずれもこの裁判確定の日から三年間、右各刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人太洋畜産株式会社(以下、被告会社という。)は、東京都江東区三好三丁目一番一〇号に本店を置き、食肉加工卸売等を目的とする資本金一五〇〇万円の株式会社であり、被告人中西三雄(以下、被告人中西という。)は、被告会社の取締役たる実質的経営者として同会社の業務全般を統括しているもの、被告人市川保(以下、被告人市川という。)は、被告会社の経理責任者として経理全般を統括処理しているものであるが、被告人中西及び被告人市川は共謀の上、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するとともに架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  昭和五九年四月一日から同六〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二七〇二万七四〇六円(別紙1修正損益計算処参照)であったのにかかわらず、昭和六〇年五月三〇日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号所在の所轄江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六九七万五三五五円でこれに対する法人税額が二一六万二二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第一〇六五号の1)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額五四〇一万八六〇〇円と右申告税額との差額五一八五万六四〇〇円(別紙2脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和六〇年四月一日から同六一年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八八六五万九五一〇円(別紙3修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六一年五月三一日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇九〇万八五二円でこれに対する法人税額が三六五万七四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額八〇六二万七〇〇〇円と右申告税額との差額七六九六万九六〇〇円(別紙4脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和六一年四月一日から同六二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億八六八五万六八七三円(別紙5修正損益計算書参照)であったのにかかわらず、昭和六二年五月三〇日、前記江東西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一八六一万八一九九円でこれに対する法人税額が七〇一万七二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、もって不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七九八六万四三〇〇円と右申告税額との差額七二八四万七一〇〇円(別紙6脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人中西及び被告人市川の当公判廷における各供述

一  被告人中西(二通)及び被告人市川(三通)の検察官に対する各供述調書

一  小保方勲の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  売上高調査書

2  期首棚卸高調査書

3  仕入高調査書

4  期末棚卸高調査書

5  給与調査書

6  交際接待費調査書

7  旅費交通費調査書

8  修繕費調査書

9  交際費等の損金不算入額調査書

10  役員賞与の損金不算入額調査書

11  事業税認定損調査書

12  雑収入調査書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  被告会社の商業登記簿謄本

判示第一及び判示第二の各事実につき

一  収税官吏作成の支払利息割引料調査書

判示第一及び判示第三の各事実につき

一  収税官吏作成の賃借料調査書

判示第一の事実につき

一  押収してある被告会社の昭和六〇年三月期の法人税確定申告書一袋(平成元年押第一〇六五号の1)

判示第二及び第三の各事実につき

一  収税官吏作成の包装費調査書

判示第二の事実につき

一  押収してある被告会社の昭和六一年三月期の法人税確定申告書一袋(同押号の2)

判示第三の事実につき

一  収税官吏作成の次の各調査書

1  運賃調査書

2  前期損益修正額調査書

一  押収してある被告会社の昭和六二年三月期の法人税確定申告書一袋(同押号の3)

(法令の適用)

被告会社について

一  罰条

判示第一ないし第三の各所為につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一、二項

二  併合罪の処理

刑法四五条前段、四八条二項

被告人中西及び被告人市川について

一  罰条

判示第一ないし第三の各所為につき、いずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

懲役刑選択

三  併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に加重)

四  刑の執行猶予

刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は食肉加工卸売等を目的とする被告会社の取締役たる実質的経営者である被告人中西及び被告会社の経理責任者である被告人市川が、共謀の上、売上の一部を除外するなどして、被告会社の三年度分の法人税合計二億一六七万三一〇〇円を免れたというものであって、その逋脱金額は多額であり、その逋脱率は、三年間を通じて、九四・〇一パーセントと高率である上、その動機に特に酌むべき点はないし、その所得秘匿の態様も計画的で、犯情は悪質というほかなく、被告人らの刑事責任を軽視することはできない。

しかしながら、被告人らは、本件発覚後全面的に犯行を自白し反省の態度を表明していること、被告会社の修正申告がなされ、本税、附帯税の納付を終わっていること、被告人らは被告会社の経理体制等を改善するなどして再犯防止の措置を講じていることなど、被告人らに有利な事情も認められるので、これらの事情を総合勘案して、被告人らに対し、主文掲記の刑をもって臨むこととし、なお、被告人中西及び被告人市川に対しては、今回に限り社会内で自力更生させるのが相当であると判断して右各刑の執行を猶予した次第である。

(求刑 被告会社につき罰金六〇〇〇万円、被告人中西につき懲役一年六月、被告人市川につき懲役一年二月)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 稲田輝明)

別紙1

修正損益計算書

(太洋畜産株式会社)

自 昭和59年4月1日

至 昭和60年3月31日

〈省略〉

別紙2 脱税額計算書

太洋畜産株式会社

自 昭和59年4月1日

至 昭和60年3月31日

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

(太洋畜産株式会社)

自 昭和60年4月1日

至 昭和61年3月31日

〈省略〉

別紙4 脱税額計算書

太洋畜産株式会社

自 昭和60年4月1日

至 昭和61年3月31日

〈省略〉

別紙5

修正損益計算書

(太洋畜産株式会社)

自 昭和61年4月1日

至 昭和62年3月31日

〈省略〉

別紙6 脱税額計算書

太洋畜産株式会社

自 昭和61年4月1日

至 昭和62年3月31日

〈省略〉

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